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日本顎関節症リハビリ研究室 /より安定した快適咬合を求めて

日本顎関節症リハビリ研究室 /より安定した快適咬合を求めて

04_日本学術会議咬合学研究連絡委員会 

日本学術会議 咬合学研究連絡委員会報告/ 咬合・咀嚼が創る健康長寿/ 平成16年12月16日
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-19-t1021.pdf
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日本学術会議 咬合学研究連絡委員会報告咬合・咀嚼が創る健康長寿/ 平成16年12月16日の/咬合・咀嚼が創る健康長寿/ところをクリックします PDFがダウンロードできます



この報告は,第18 期日本学術会議咬合学研究連絡委員会および第19 期日本学術会議咬合学研究連絡委員会での審議結果を公表するものである。


要旨

1.提言の背景

「食べる」ことは,身体的,精神的に健康な状態を維持するための基本的活動であり,生命の維持に直接的に関与して「健康長寿」に寄与する。このために必要なことは,「噛んで(咀嚼して)食べる」ことである。そこで,すべての世代に「食べること」,「咀嚼すること」の大切さを再認識させ,その礎となる健全な咀嚼環境としての咬合こうごうを確立することは,「食べる」ことを通じた健康の維持・増進や我が国の食文化を守ること,さらに高齢者の生きがいや介護予防や介護の重症化予防の上にも極めて重要であり,我が国における最も大きな今日的課題のひとつである。

2.現状と問題点

胎児期から高齢期までの各ライフ・ステージを俯瞰すると,「噛んで食べる」ことに関する課題は,

1)軟らかいファーストフードの氾濫や安易な栄養補助剤,個人の摂食機能を考慮しない病院での食事形態の安易な選択など,我が国の咬合こうごうと咀嚼そしゃくの重要性の認識を欠いた「食べる」ことは危機的な状況にあり,正しい咬合こうごうと咀嚼そしゃくによる「食べる」ことの重要性が社会に十分伝えられておらず,理解が得られていないこと,
2)各ステージでの歯科検診の有機的連携が欠如していること,
3)幼児・小児期における「噛む」という動作能力の低下にともなって顎骨や咀嚼筋の成長発育の阻害や学習能力の低下がみられること,
4)学齢期に食生活・咀嚼習慣指導と口腔衛生指導が一体的に行われていないこと,
5)適切な生活習慣を形成する家庭の中で,食卓という家庭生活における学習場面が十分機能していないこと,
6)高齢期に「食べること」を確保するために必要な歯科治療アクセスが十分でなく,とくに要支援・要介護高齢者では治療を十分に受けることができない不平等があることである。

3.具体的目標(提言)

1.「健康長寿」を確保するための社会的理解の推進
社会に対する情報伝達の不足を反省し,咬合と咀嚼に関するライフ・ステージを俯瞰する情報をもとに,地域や学校などと協同して,またインターネットを介して啓発活動を行う。

2.「健康長寿」を確保するための歯科医療の推進

1) 口腔の健全な発育を促し,食を育む体制の整備
学校歯科医や保険医の再教育と,栄養指導ができる口腔衛生指導教諭(仮称)の人材育成を促進する。
2) 生涯を通じた口腔健康管理の推進とそれを可能にする環境の整備
歯科医師法および歯科衛生士法における任務規定の整備と必要な改正を進め,
健診事業を有機的に連携させる。
3) 介護保険・社会福祉施設への常勤歯科医師の完全配置
要介護高齢者のQOL を向上させるための効果的な歯科医療体制を提供する。



第18 期日本学術会議咬合学研究連絡委員会

委員長小林義典(第7部会員,日本歯科大学歯学部教授)

幹事委員赤川安正(広島大学大学院医歯薬学総合研究科教授)
同相馬邦道(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科教授)

委員田中貴信(愛知学院大学歯学部教授)
同西山實(日本大学歯学部教授)
同藤井弘之(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科教授)
同山田好秋(新潟大学大学院医歯学総合研究科教授)
同渡辺誠(東北大学大学院歯学研究科教授)

第19 期日本学術会議咬合学研究連絡委員会

委員長小林義典(第7部会員,日本歯科大学歯学部教授)

幹事委員赤川安正(広島大学大学院医歯薬学総合研究科教授)
同相馬邦道(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科教授)
委員市川哲雄(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部教授)
同西山實(日本大学歯学部教授)
同野首孝祠(大阪大学大学院歯学研究科教授)
同山田好秋(新潟大学大学院医歯学総合研究科教授)
同渡辺誠(東北大学大学院歯学研究科教授)
日本学術会議 咬合学研究連絡委員会報告 咬合・咀嚼が創る健康長寿 平成16年12月16日


3.「健康長寿」を確保するための科学と技術の推進

1) 歯学と医学など他領域との連携強化

歯学と他領域との連携強化を一層図りながら,国民の総合的医療の提供のための具体的施策を提案する。

2) 大規模前向き疫学研究の推進

咬合・咀嚼と全身の健康,生活習慣病,QOL,ADL,栄養などとの因果関係をさらに明らかにする。この報告は,少子高齢社会において,咬合・咀嚼の面から国民の「健康長寿」の実現のために必要な提言を行うものであり,今後,関係する他領域の協力を得て,さらに具体的施策などについて検討を続けていきたい。この報告が歯学・歯科関係者はもとより,広く健康を願う方々の参考としていただけることを望むものである。


目次

はじめに........................................................... 5
1.提言の背景..................................................... 6
2.「食べる」ことに関する現状と課題................................ 9
3.課題解決に向けた戦略.......................................... 15
4.具体的目標(提言) ............................................ 17
5.期待される効果................................................ 21
参考資料(図) ........................................................
参考文献............................................ 23
用語の説明........................................... 28




はじめに

21世紀に未曾有の少子高齢社会を迎える我が国にとっての大きな課題は,単なる寿命の長さだけでなく,生活の質にも配慮したいわゆる「健康長寿」をいかにして確保していくかにある。このなかで,「食べる」ことは生涯にわたり人間的な生活を送るための基本であり,それぞれの地域で築きあげた食文化を守り,なるべく多くの種類の自然食品を素材とした食事を摂取することで,健康を守ることが可能となる。すなわち,「食べる」ことは健康や生きがいとの関わりのなかでは国民の最大の関心事であると考えられる。

そこで,自然界の食材から健康を維持するための必要栄養素を適切に摂取するためには,口から食べて咀嚼(用語を参照)する機能を維持することが極めて重要である。咀嚼機能を用いて「食べる」第一歩は「噛む」ことであり,咬合(噛み合わせ)(用語を参照)と咀嚼をベースとして,「食べる」ことの正しいあり方を考え,科学的根拠に基づいて行政施策を実施することが,今求められている。

日本学術会議咬合学研究連絡委員会では,日本歯学系学会連絡協議会と協力し,改革後の日本学術会議における審議課題への対処方法をも視野に入れ、精力的に審議を行ってきた。
この報告は,それらの結果をとりまとめたものである。この報告が歯学・歯科関係者はもとより,広く健康を願う方々の参考としていただけることを望むものである。



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